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スーパームーンを討伐しよう?!

#月の運動 #観察情報 #スーパームーン #満月

はじめに

2020年代に入り, 毎年ニュースで「スーパームーン」という語彙を耳にする機会が増えてきたことでしょう.

スーパームーンとは, 一般的には地球に近い満月などと表現されます. しかし, 天文学の語彙ではなく, 客観性に課題があるとの指摘があります.

しかも, 日本の国立天文台でも, スーパームーンの語彙の定義はなく, 暦年で最も地球に近い満月などといった表現になっています.

本記事では, 既存の定義を少し掘り下げて, 天文学的且つ客観的に再定義を行います.

以下, 特に断らない限り, 日本時間 (UT1+09 又は UTC+09) とします.

語彙の定義 (一般)

「スーパームーン」や「エクストリームスーパームーン」について, 一般的に占星術師 Richard Nolle による定義又はその派生版が引用されています.

スーパームーン

月の軌道の平均近地点の90%以上まで近づいた新月又は満月とします (遠地点を0%とします).

エクストリームスーパームーン

月の軌道の平均近地点の100%以上まで近づいた新月又は満月とします (遠地点を0%とします).

あるいは, 月が近地点を迎える時刻と新月・満月の時刻の差が1時間以内の場合とします.

実例

西暦2025年11月05日, 西暦2025年12月04日の満月, 西暦2026年05月17日, 西暦2026年06月15日の新月など, 月と地球の距離が 360,000 km 未満の新月や満月は, ほぼ漏れなくスーパームーンに分類されているようです.

エクストリームスーパームーンには, 満月の例として西暦2016年11月14日 (356,510 km) や西暦2025年11月05日 (356,830 km) などが挙げられています.

語彙の定義 (Moon Logbook)

Moon Logbook では, 「スーパームーン」と「エクストリームスーパームーン」の2つの語彙を定義しています.

月が地球に近付き, 大きく見える現象を扱うため, 基準は月と地球の距離のみとなります. 月と地球の距離の計算は幾何位置ではなく, 地球から観測する視位置に基づきます.

語彙の定義が適用されるのは西暦1583年01月01日から西暦2649年12月31日までの1067年間に限られます. それ以外の範囲では, 単に「地球に近い月」又は類似した表現となります.

スーパームーン

月の中心と地球の中心間の距離が 360,000km 未満の月とします.

エクストリームスーパームーン

月の中心と地球の中心間の距離が 356,400km 未満の月とします.

スーパームーンの実例

スーパームーンは毎年複数回あります.

西暦2024年10月17日のスーパームーンの満月

西暦2024年10月17日のスーパームーンの満月

撮影情報 (1 件) ▼
撮影日時:2024-10-17 21:29:40 UTC+09:00 月齢:+14d 17h 40m 24s露出設定:ISO 100, f/6.5, 1/197s撮影機材:Canon PowerShot SX70 HS, a tripod撮影地:Ookayama, Tokyo

最も分かりやすい典型例としては, 世間でも大きく報じられた西暦2024年10月17日の満月などが挙げられます.

しかし, 定義に満月という語彙が含まれていないことからも明らかなように, 満月に制限されません.

西暦2025年11月04日と06日のスーパームーン

満月前後の, 西暦2025年11月04日と06日の夜のスーパームーン

撮影情報 (2 件) ▼
撮影日時:2025-11-04 24:02:52 UTC+09:00 月齢:+14d 02h 37m 42s露出設定:ISO 100, f/6.5, 1/197s撮影機材:Canon PowerShot SX70 HS, Velbon EX-440撮影地:Ookayama, Tokyo
撮影日時:2025-11-06 22:23:07 UTC+09:00 月齢:+16d 00h 57m 57s露出設定:ISO 100, f/6.5, 1/395s撮影機材:Canon PowerShot SX70 HS, Velbon EX-440撮影地:Ookayama, Tokyo

満月の前晩や翌晩であっても, 距離の要件さえ満たせばスーパームーンを名乗ることができます. 例えば, 西暦2025年11月04日や西暦2025年11月06日 (満月の前翌晩) の月が挙げられます. これは, スーパームーンの満月を, 天気などの理由で見られない場合に対する配慮です.

西暦2025月04月26日と西暦2026年05月17日のスーパームーン

西暦2025月04月26日と西暦2026年05月17日の, 新月近傍のスーパームーン (強調版)

撮影情報 (2 件) ▼
撮影日時:2025-04-26 28:37:36 UTC+09:00 月齢:-00d 23h 53m 33s露出設定:ISO 100, f/6.5, 1/16s撮影機材:Canon PowerShot SX70 HS, Velbon EX-440撮影地:Ookayama, Tokyo
撮影日時:2026-05-17 19:05:48 UTC+09:00 月齢:+00d 14h 04m 46s露出設定:ISO 100, f/6.5, 1/6s撮影機材:Canon PowerShot SX70 HS, Velbon EX-440撮影地:Ookayama, Tokyo

新月近傍であっても同様です. Moon Logbook の運営者が観測できたものとしては, 西暦2025年04月26日や西暦2026年05月17日の月が挙げられます.

エクストリームスーパームーンの実例

一方で, エクストリームスーパームーンは極めて稀です.

近地点の時刻で表現すると, 以下表の7回のみです.

番号西暦日付近地点の時刻距離 (km)
11893年12月23日11時48分35秒356,396
21912年01月04日22時40分41秒356,375
31930年01月15日09時32分43秒356,396
42257年01月01日21時54分16秒356,371
52275年01月13日08時46分48秒356,377
62601年12月31日21時17分01秒356,385
72620年01月12日07時53分05秒356,376

新月や満月の時刻に限れば, 以下表の5回のみで, 全て満月です.

番号西暦日付満月の時刻距離 (km)
11912年01月04日22時29分22秒356,375
22257年01月01日22時16分29秒356,371
32275年01月13日07時09分07秒356,382
42601年12月31日22時09分32秒356,387
52620年01月12日07時01分41秒356,377

一般的な基準に比べても非常に厳しいですが, エクストリームの語彙自体が極値を表す以上, 1067年間に10回以内しか現れない基準を設けることはやむを得ないと考えています.

既存の定義の問題点

既存の定義には, 定義の一貫性や再現性・複雑さと言う課題があります.

エクストリームスーパームーンについても, 西暦2025年11月05日の満月より地球に近く, 満月の瞬間との時間差も小さい西暦2026年12月24日 (356,648 km) が分類されていません.

遠地点を0%として平均近地点を100%としたときに100%以上まで近づくという定義も含め, Moon Logbook の運営者は残念ながら再現することができませんでした.

また, 月が近地点を迎える時刻と新月・満月の時刻の差をエクストリームスーパームーンの基準にすることも問題があります.

満月と近地点の時刻の差, 地球と月の距離

縦軸: 満月と近地点の時刻の差 (時間), 横軸: 月と地球の距離 (km)

簡単のために, 新月前後は除いて考えます. 近地点と満月の時刻が近いほど, 月と地球が近付く傾向は確かに見られます. しかし, 両者の差が1時間未満であっても, 356,400 km を下回るどころか, 357,000 km を超えている例もあります. 一方で, 356,400 km 未満となる前述の7例中3例についても, 満月から1時間以上離れています.

従って, 距離に加えて時間差を基準にすることは, 定義の複雑さが増える一方で, 本当に近づいた月を見落とす恐れがあります.

Moon Logbook の定義の問題点

Moon Logbookでは, 月と地球間の距離のみを判定基準に採用しました.

その一方で, スーパームーンの定義が西暦1583年から西暦2649年までの間に限られています. 潮汐摩擦等の理由で地球と月が年々遠ざかっていること (軌道要素の経年変化), 地球の自転 (ΔT) の予測が難しいことから, 一貫性を持って判定ができる期間が限られてしまいます.

さらには, Moon Logbook の基準は単純ですが, 一般的には普及していないという弱点もあります. 今後も, あくまで当サイトでの運用が中心となりそうです.

おわりに

スーパームーンは一般的には天文学的な語彙ではなく, 占星術などの主観的な意味合いを含みます. 本記事では, 定義の複雑さ・主観性を極力取り除いて天文学的・客観的に再定義を試みた次第です.

参考文献 (原語版)▼

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